2018年3月6日火曜日

Avantgarde Turntablism - L?K?O x KEN-ONE x 100mado -


Murder Channel Talk Show Vol.2にておこなったL?K?Oさん、KEN-ONEさん、100madoさんにご参加して頂いた異端ターンテーブリスト/アヴァンギャルド・ターンテーブリズムに関する対談をテキスト化!
3人のターンテーブルに関するルーツから、Christian Marclay~大友良英~The Scratch Perverts~Q-BERT~DJ Swampといったターンテーブルを楽器として使い革命的な音源を残してきたレジェンド達の作品紹介やKEN-ONEさんの改造ポータブル・ターンテーブルのお話など、極端かつポップなターンテーブリズムの魅力を凝縮した非常に濃い対談となりました!





UME(以降U).  皆さんがターンテーブルを買ったキッカケは?

KEN-ONE(以降K). 僕が高校生くらいの時に高校生DJみたいなのが流行ったんですよね。「東京ストリートニュース!」とかでもてはやされててTVでも取り上げられたりしていて。その時をきっかけにターンテーブルを買ってみたいなって。

L?K?O(以降L). それって何年位?DJがもてはやされてた時期なんてあったっけ?(笑)

K. 僕が17歳位の時だから95年~6年位でしたね。結構人気でしたよ。

U. 最初に買われたのはTechnicsのタンテだったんですか?

K. はい。中学生の頃からヒップホップは聴いていてラップもしてみたりして、それでDJ機材も買っていってスクラッチも同時進行でやっていました。その当時、地元が静岡の伊豆なんですけど、東京に行った時に纏めてレコードを買って帰って家でDJの練習をずっとしていました。その当時はGroup HomeとかDJ Premier関係をガッツリ聴いていました。取り合えず何でも2枚買いしてた時代でしたね(笑)。
その時代の情報源ってMIXTAPEがメインだったじゃないですか?だから、MIXTAPEを買い漁ってTAPEと同じMIXが出来るように練習していました。それと高校生の時、放送委員だったんですよ。お昼時間に自由な曲を流せたから自分のMIXをかけたりしていて。後から先輩に怒られましたけど(笑)。

L. えー!俺も小・中で放送委員だった!DJが元々放送委員って意外に多いのかもね。

U. その頃に影響を受けたDJ/ターンテーブリストって誰ですか?

K. その当時からQ-BERTは有名だったはずなんですけど、僕はMIXTAPEから入っていったのでQ-BERTとかは後追いで。その当時だとDJ Spinbadですね。MIXTAPEを聴いて凄い衝撃を受けました。スクラッチは上手いし使っている曲もカッコいいし。普通のMIXTAPEよりもMTRを使って作りこんでいて凄い凝ったMIXを作っていましたね。自分もそういうMIXを作りたくて。どうしたらいいか考えて、まずはスクラッチを練習していこうってなってのめり込んでいきましたね。



U. 100madoさんは?

100mado(以降100). 高校生の頃からドラムンベースが好きで。同級生がテクノ大好きで電気GROOVEのオールナイトニッポンとかテクノ専門学校とかをチェックしていたからテクノは彼に任せようと。それで自分は違うジャンルを買おうとおもってドラムンベースやStereolab、Tortoiseとかの音響系とかね。その頃はDJになるつもりは無かったんだけどレコードは集めていて。DJに興味はあったけどレコードをたいして持ってないのにターンテーブル持ってる奴は駄目だと思ってたから(笑)。100枚位集まってからDJやるのは考えてみようかなって。それでも少ないけど(笑)。

U. その頃は学生ですよね?100枚集めるのも大変では?

L. でも、その頃は今よりも全然レコードの値段が安かったよね。新譜でも700円とかだったからさ。

100. そうそう。中古はもっと安かったし、あと若かったからあんまり食べないでもいい時期だったし(笑)。それで、ある程度レコードが集まって21歳の時にタンテを買ってDJをやり始めて。始めた頃はテクノの友達の影響もあってテンポをキープするのが命と思ってたね。僕の場合はDJ HYPEとかドラムンベースのDJのMIXTAPEを聴いて真似したりとか。スクラッチとかは考えてなかったけどノイズの文脈でミュージック・コンクレートとかChristian Marclayとかは知っていた。

U. L?K?Oさんは?

L. 自分が高校の時にダンス甲子園が流行ってて、その影響もあって最初はダンスをやってて。ダンスの為の曲を編集するのにタンテとフェーダーの変えがきかないヤマハのミキサーを1台づつとMTRを買って。タンテ1台でダンス用のTAPEを編集するところが入り口で。ヒップホップの文脈から入ってるからタンテを買った日にはアホほど擦ってたけど(笑)。

U. 前から聞きたかったんですけど、L?K?Oさんが影響を受けたDJって誰とかなんですか?

L. それこそ情報が無い時代だからマジ自己流。その当時のTAPEはまだ残ってるけど、おもちゃの銃をピュンピュンマシーンみたいにしてマイクで拾って鳴らしてみたり、セサミストリートにブレイクビーツをミックスしたり、高校の頃からちょっと変わった事はしてたけど、それが意識的になったのは大学の頃かな。下北沢のSLITSでバイトしたり、Original Loveに参加したり影響は色々あったけど。妙に記憶に残ってるのが、和光大学の軽ジャズ研で遊んでた頃。プレハブの掘っ立て小屋を部室みたいにしてて、そこにDRY & HEAVYの青君(Ao Inoue)とかギタリストでDubのトラックメイカーのダイハチ君とかがいて。その頃って成城学園の粗大ゴミの日とかにお金持ちが家のカラオケ用に使ってたROLANDのスペースエコーをバンバン捨てて。そのゴミ漁りを2人が繰り返してたら最終的に部室にテープエコーが5台積み位になってたってゆう(笑)。Lounge Lizardsのレコードをかけながらテープエコー5台でグニャグニャにしたりして遊んでた。
所謂ミュージックコンクレートだったり実験音楽やノイズ、Christian Marclayとかをちゃんと聴くようになったのはMOODMANと知り合ってLOS APSON?に通うようになったのがキッカケ。

U. 名前が出たからChristian Marclayを見てみましょう。



L. アヴァンギャルドなターンテーブリストとかエクスペリメンタルなDJの文脈での最重要人物だよね。このクリック音は何で出しているかっていうとレコードの盤面にテープを貼っているんだよね。テープによってチョップされてクリック音になるっていう。自分も色々作ってたんだけど、これ(写真)とかはBounty Killerのアカペラにテープを貼ってる。


L. あと、Marclayがやってたのは別々のレコードを切って繋ぎ合わせて盤自体でコラージュを作るっていうやつ。発想がチャーミングだよね。

K. このレコードプレイヤーも凄い。始めて見ましたけどこの人完全にターンテーブリストですね。

U. L?K?Oさんと100madoさんはミュージックコンクレートなどの流れでMarclayは聴かれていたそうですが、最初聴いた時はどう思いましたか?

100. Marclayを知る前にQ-BERTとかバトルDJの文脈を知ってたから、ただ単にむちゃくちゃやってる様に最初は思ったけど、ちゃんと聴くと凄く音楽的だなって。コアな部分で音に信念があるっていうか。

L. ホント音楽的だよね。実験音楽とかノイズに共通することだけど、良く聴くとスゴくドープだし、いい意味での曖昧さが脳内映像を喚起させるよね。精神に変調を来たすヤバい音。Marclayはアートの文脈でも意識的にコンセプチュアルな事をやっていて、コレ(写真)とかジャケットをつけないで出荷して、レコードがお店に運ばれている流通の段階で付いた傷も音楽の一部として聴きましょうっていうコンセプト。俺はジャケットを被せているけど(笑)。本来はジャケットも何も付けないままの状態でどんどん傷を付けてそれも作品として楽しむっていう。ヒートダメージのざらついたノイズとかもカッコイイもんね。


U. Christian Marclayの作品って音的にかっこいい瞬間がありますよね。そのかっこよさっていうのはDJミックスとかジャグリングとかでは出せないというか、普通にレコードをタンテに乗せて同時掛けするだけでは出せない何かがありますよね。

L. うん。その瞬間を味わう楽しむっていうのは即興音楽を聴く姿勢として正しいと思う。Marclayは同時掛けを進めた結果、100台のターンテーブルを螺旋状に並べて同時に掛けていたからね。多分それがタンテを使ったパフォーマンスでは最大じゃないかな。それで、集めたタンテをライブが終わった後に1台づつ即売したっていう(笑)。
あとレコードをフロア中に敷詰めてお客さんに踏んで貰って付いた傷で演奏するインスタレーションをしたり。
ただ、Marclayがアヴァンギャルドなターンテーブルの使い方を見出したしたように思われがちだけど、Marclayは1955年生まれで実はJohn Cageがその頃にはタンテでやれる事は大体やり尽くしてたんじゃないかなって思う。タンテを使って演奏するとか機材を改造するとかね。
カートリッジに針じゃなくてバネとか風船とか人参とかを付けてピックアップにしてたり。当然MarclayはJohn Cageから凄まじく影響を受けているはず。
あと、ミュージックコンクレートの生みの親って言われているPierre Schaefferとかもね。自然界の音とかが録音されているメディアの再生段階でスピードを変調させて新しい音を生み出そうっていう事をしていて。Pierre SchaefferはBBCの音楽倉庫のアーカイバーとして働いていたから膨大なテープやレコードを当然自由に出来てBBCの機材を使って実験をしていたみたい。この前亡くなってしまったけど、テクノの元祖とも言われているPierre Henryと組んで作品を作ったりね。ミュージックコンクレートっていうと御堅いイメージがあるかもしれないけどざっくり言えばサンプリングの始祖でもあるよね。



L. 実験的なターンテーブリズムは知れば知るほど手法とかの部分はやり尽されてる感はあるけど、John Cageが提唱したChance Operation的に、カットアップされて作られたレコードから生まれる音は確実にその1枚しかないし、どんどん切り刻んで自分のレコードを作ったらいいと思う。そのレコードはその人の作品だから。


U. 日本のアヴァンギャルドなターンテーブリストでは大友良英さんが有名ですよね。ソロでの作品も素晴らしいんですけど、個人的にはDJ CARHOUSE & MC HELLSHIT名義での作品が大好きでずっと聴いていました。



L. Ground Zeroはもちろんマイナーな名義だとDJ Tranquilizerとか、大友さんのプロジェクトは沢山あるし、今や世界的にも第一人者だよね。DJ CARHOUSE & MC HELLSHITで思い出したけど、山塚さんも高木完さんとのSound Heroのライブで掛けたレコードをステージ前に積み上げていって最終的に燃やすパフォーマンスをしてたっけ。

U. 100madoさんとL?K?Oさんは大友さんとセッションされているんですよね?

100. BusRatchの頃に京都メトロと忘れちゃったけど別の場所でも1回やっていて。
大友さんもMarclayと同じで音楽的でさっきUme君が言ってた何とも言えないかっこいい瞬間が多い。色々なアヴァンギャルドなターンテーブリストはいるけど、大友さんとMarclayは別格だと思う。

L. ホント大友さんは圧倒的な存在だよね。なにより色んな人とやり続けているし。実験音楽家でありながら「あまちゃん」でお茶の間の一般人からも認知されてるっていう。
大友さんがきっと影響を受けている人で盟友的なMARTIN TETRAULTっていうカナダのターンテーブリストがいるんだけど彼はミキサーもタンテも全部自作していて。MARTIN TETRAULTと大友さんが一緒にやっている作品も色々出てるけど、どれも素晴らしい作品でアヴァンギャルドなターンテーブル・ミュージックが増えるキッカケになってるんじゃないかな。
所謂アヴァンギャルドなターンテーブリストってその歴史と相まって"実験音楽的"っていう括りである程度内容の想像がついてしまうとこはあると思う。そういうのもあって大友さんとバトルDJを掛け合わせたいっていうアイデアが前々からあって。菊地成孔さんのDCPRGの前座でバトルDJのSKE君と大友さんと俺とでセッションをした事があるんだけど、あれは自分がずっとやってみたかったバランス感が出せたなって今も思い出す。


U. KEN-ONEさんもいろんなジャンルの方とセッションされていますが、最も印象的だったセッションはなんでしたか?

K. ビートボクサーのBeardymanかな。彼は一人で何でも出来るじゃないですか。だから、どの音を選んで切り込んでいくかっていうのがスリリングでしたね。セッションの場合はその時その時の空気を感じとって組み立てていくのが面白いです。



U. L?K?OさんはMERZBOWと灰野敬二さんともセッションされていますよね?どういった形でセッションは進めていくんですか?

L. 秋田さん(MERZBOW)とのセッションは宇川さん(宇川直宏)の作った「MODULATIONS」っていうDVDに入ってるけど。その為のセッションで。秋田さんともその場でお互いの音を聞いてやりましょうって話だったと思う。即興に関しては基本的にほぼ打ち合わせ的なことした事は無いから。
灰野さんとのセッションは、灰野さんがハーディ・ガーディをやって俺はタンテ。その時の約束で今度やる時は俺は蓄音機を使いたいって話をしていて、灰野さんに会う度に「いつあれやる?」って覚えててくれてて嬉しい。いつか2人でハンドル回せたらいいな。



U. 一時期DJ Quietstormさんと頻繁にライブされていましたよね?

L. ロバート(Quietstorm)とは純粋にスクラッチをメインにやっていたかな。MIXTAPEと近いノリだったと思う。

100. 俺、L?K?OさんとQuietstormさんのMIXTAPEに凄い影響受けていて。Quietstormさんに対してL?K?Oさんが攻撃的にコラージュしていってテンポを変えたり、でも凄いポップで。あのTAPEの存在は大きかったと思う。

L. 当時は所謂スクラッチのDJはヒップホップっていうイメージだったから。それ以外の所でやろうってのは意識的にやってたかな。自分はバトルDJと実験的なDJの中間的な部分を狙って。ま、っていうか、そういう異形のものが単純に好きなだけなんだけど。
この流れでエクスペリメンタルなターンテーブリストをまとめたいっていうか、紹介したい人がいっぱいいて。僕の友達でYann Leguayっていうアーティストがいるんだけど、この人はピックアップをいろんな物にしていたり、ハードディスクをターンテーブルに模してたりとか。すごく精力的に活動してて面白い人。
日本人だとDJ Sniff君とかDJ MEMAI君も自分と同じバランス感覚でやってる。あ、Bingさんも。Bingさんもずっと面白い試みをやり続けている人で最近だとターンテーブルをモジュラーシンセに突っ込んでレコードの音源をランダマイズするライブをしていたり。あと、沖縄で会ったDJ PIN君。フリージャズ的なドラムを2枚使いで新しいビートにしたり、バトルの技術もしっかりしてて実験的な音で最高だった。後、ターンテーブリストとは違うけど、YUDAYA JAZZ、半野田拓、DJ置石、ケンジルビエン、DJ PEE君とかも是非チェックを。あ、最近の中原(昌也)さんのライブも!他いっぱい居るけど彼らをフォローしてたらいずれ巡り会うだろうから。ま、こんなとこで。




U. バルトDJとアヴァンギャルド的な要素を組み合わせたイギリスのThe Scratch Pervertsの存在も大きいですよね。



K. Tony VegasとPrime CutsはバトルDJの中でも異端でしたね。

L. この動画のパフォーマンスを見れば解るけど、一個一個のタンテがトラックになっている。ベースライン、ドラム、上モノとかの素材をフェーダーの上げ下げでコントロールしていって。

U. このハウリングはどうやって鳴らしているんですかね?こういったハウリングやノイズとかを使い始めたのってThe Scratch Pervertsが始めてなんですか?

K. DJミキサーのヘッドフォンアウトから入力に持っていってフェードバックさせているんですよ。ボリュームを変えるとフェードバックの音色も変わるのでフェーダーを使ってグルーブを作っていったり。
この頃って2000年前後位だと思うんですけど、その当時バトルDJの中で誰もやっていないことをやるのがカッコいいという流行みたいなのがあって。その流れもあってこのスタイルを彼らが提示してきたんですよね。

L. take it off, take it off,ってフレーズと共にレコードを1枚づつ取っていってタンテにレコードが乗っていない状態からフィードバックをやりだすっていうこのルーティンの流れが決定的にヤバイ。レコードを取っちゃえ取っちゃえっていう前段からここに展開していくのがバトルDJとしてのエンターテインメント的なポップさがあって尚且つエクスペリメンタルでもあるっていう。

100.僕もThe Scratch Perverts好きで。そもそもヒップホップが出発点なのに突き詰めていくうちに、これヒップホップ?みたいになっているのが面白いですよね。L?K?Oさんの言うとおりバトルDJ的なポップさもあるし。
この動画のライブとかは大友さんのリスムがあるバージョンっていうか、針触って演奏するとかターンテーブリストなの?っていう(笑)。でも、バトルDJの特徴としてはあくまでリズムを求めているというか必要ではあるのかなって。大友さんはこういうフェーダーの刻みは絶対しないだろうし、この絶妙なギリギリ間が最高で。


100. あと、バトルDJの文化は全然詳しくないけどPlus Oneが大好きで。このフェーダーの刻みとかトランシーで気持ちよくてずっと聴いていられる。The Scratch Pervertsもそうだけどオリジナリティを求めていってドンドンとアヴァンギャルドになっていっているっていうか、、やっぱり本質を見ると相当狂ってますよね(笑)。



L. 音的に近いとこだとMIX MASTER MIKE、LIVE HUMAN、SPACE TRAVELERS (ex. Bullet proof scratch humsters)あたりの音源は今もちょくちょく聴くかな。バトルDJって合気道とか茶道みたいな道だよね。ターンテーブル道っていうか。技術を磨いてオリジナリティーを競い合うっていう青春感がいくつになってもグっとくるわー。



U. 確かにターンテーブル道って感じですよね。スキルと狂ったセンスを兼ねそろえているのはQ-BERTとInvisbl Skratch Piklzもですよね。



K. この動画のレコード盤をコウ君(L?K?O)持って来てましたよね?

L. うん。特にラストが胸熱。このISPのルーティンはチームバトルの集大成って感じする。実際、ISPとX-MENのバトルがシーンの最盛期だったような気もするし。



K. この頃でまだ94~95年ですからね。これ以降はちゃんとパート分けされていって、この人はドラムでこの人はベースとか。

L. Q-BERTのアニメ(Wave Twisters)もマジおもろいよね。あと、Q-BERTのレーベル「Dirtstyle」はジャケが全部ユルくて好き。Bionic Booger Breaksのジャケとか最高だよね(笑)。これは歴代のバトブレで一番売れたんじゃないかな。


100. ノリが西海岸ですよね。エログロ的で悪趣味なスカム感がすごい。俺がこういうバトル系に興味を持ったのがアヴァンギャルドとかスカムカルチャーと近いのを感じてたから。ストリートでヤンキーなヒップホップ文化とは違って下品だし(笑)。

L. 宇川さんのレーベル(Mom 'N' Dad Productions)からQ-BERTのCDがリリースされて日本に呼んだ時に俺もQuietstormと一緒に出たんだよね。そん時に宇川さんがQ-BERTを歌舞伎町にあったのぞき部屋に連れて行ったらQ-BERTが個室部屋から女の子の動画を撮ってたのが黒服に見つかって店からつまみ出されたっていう伝説が(笑)。宇川さんとQ-BERTの話になると必ずこの話が出るんだけどね(笑)。

K. 宇川さんはD-STYLESとQ-BERTのスクラッチだけのCD(Hot Sauce In The Dick Hole)もリリースしてましたよね。あのCDは凄い聴いてました。



L. 俺はQ-BERTは初期のMIXTAPEを一番良く聴いてたかな。スパイダーマンのテーマ2枚使いで始まるやつ。60-70sのファンクブレイクを擦り倒してて最高。
さっきも話に出たX-MEN(X-Ecutioners)もチャーミングだよね。忍者的なボディトリックというか。ボディトリックの部分もエクスペリメンタルなターンテーブリズムの文脈で捉えられるけど。初期のDMCの世界大会でイタリア人のDJがスパッツの股間に詰め物してチ○コでフェーダーを切るっていうパフォーマンスしてたけど、あの時代のDMCは本当狂ってたよね(笑)。ストリートファイターみたいに世界中のキワモノたちが集まってた。



U. アヴァンギャルドという意味ではDJ SWAMPも重要な存在ですよね。個人的にこの界隈で最も好きなターンテーブリストですね。スクラッチも個性的で見た目も世界観も完璧で。



L. 俺も大好きだよ。Q-BERTが来日した時に対談させて貰ったんだけど、その時にQ-BERT大好きだけどSWAMPの方がもっと大好きって言ってしまう位(笑)
BECKのサポートDJで日本に来た時にイベントに呼んだ事があるんだけど、2時間位ジャグリングもスクラッチもラップもしまくって。それで、この人の代名詞でもあるんだけど、最終的にプレイしたレコードを割りまくって客席にぶん投げるんだけど、フロアに居た女の子達が叫びながら逃げ惑ってる中、中原さん(中原昌也)と宇川さんが絶叫しながら大喜びしてた(笑)。火着けた手でレコードをスクラッチしてゲームセンターあらしの炎のコマみたいにファイヤースクラッチしたり(笑)。割ったレコードで切腹して血出したりね。典型的なホワイトトラッシュ(笑)。(※つい最近の東京でのショーケースでは更にverアップして各指からボーボー炎が噴射されてたとのこと。)DJ SWAMPとはよく言ったもんだよね。歳取ったら悪魔の沼のネヴィル・ブランドみたいになりそう。あ、ロベルト吉野とTUCKERにも確実に同じ血が流れてるよね。



U. 音源でもSWAMPは新しい技術を使って面白い物を作っていましたよね。

K. 最初にスキップレスを作ったのはSWAMPらしいですからね。
さすがチャンピオンだけあってスクラッチもすごい上手いんですよ。基礎がしっかり出来ていて変態っていう。僕が2000年にDMCに出た時に関東予選のゲストと審査員がSWAMPだったんです。実際にSWAMPのライブを生で見たんですけど凄かったですねー。



L. スキップレスもそうだしループ集も出しているよね。一溝ごとにいろんなトラックがエンドレスループで入ってて、ブレイクビーツとハウス、ドラムンベースのシリーズを2枚づつ出してた。あと、ロベルト吉野がDMCのルーティンでも使ってる片面全面がギターの音階のバトブレとか。自分もライブでも良く使うし、今日BUSRATCHのも含めてエンドレスループのレコードいっぱい持ってきたからそこももっと話したいとこだけど…(時間の都合で断念)。いずれにしてもSWAMPは面白いレコードを沢山出してるね。パフォーマンスでもツールでもバトルDJのシーンに圧倒的なオリジナリティを齎した。あとソロだとDJ Swampはもちろんだけど、A-Trak、DJ Craze、KentaroのDMCのwinning setも忘れがたい。特にKentaroのルーティンは何度観ても感動するね。



U. 僕とL?K?Oさんが同時期にハマってたベルギーのDJ Elephant Powerも面白いアイデアを持った音源を作っていますよね。スクラッチもオールドスクールな雰囲気がありながら独特で。Scratch Pet Land名義の作品も素晴らしいし。



L. Elephant Powerのクロルは長年のマイメンだよ。彼もチャーミングでキュートな感性の持ち主。最近はアフリカでよくライブしているみたい。さすがElephant Power(笑)。
俺がヨーロッパに行った時は一緒に回ったりとかベルギーでイベントを企画してくれたりして。Yann LeguayとElephant Powerと一緒にアムステルダムのSTEIMっていう電子音楽研究所でのイベントにDJ Sniff君が呼んでくれた事もあった。
Elephant Powerの兄貴もSun OK Papi K.O.っていうアーティストでイルリメ君とコラボしてたりするんだよね。兄弟でFun Club Orchestraとしても活動してたり。
俺はまだ洗練されてない頃の初期のアルバムがかわいくて特に好き。ずっと日本に来たいって言ってくれてるんだけど力不足で申し訳ない…。



U. 話が戻るんですが、100madoさんが居た頃のBusRatchではどんなライブをされていたんですか?

100. ライブは完全にインプロでタンテをメインに使ってたけど俺はCD-Jの方が多かったかな。ビートに囚われないスタイルではあったんだけど、ターンテーブリズムとかバトルDJも好きだったからある程度の構成は考えてた。エフェクターもタイム感があるような物は避けていて、使ってもリバーブとかね。

U. 100madoさんがBusRatchに在籍していた頃にも音源はリリースされていましたけど音源製作はどのように進めていたんですか?

100. 俺が居た頃はRoland VS-880を使ってスタジオとかでセッションした音源を切り割りしていた。BusRatch vs. Computer Soupはライブ盤だったけど、それ以外は基本的にセッションをコラージュして作っていく形だった。

L. 毛利さんは京都でパララックスレコード っていう実験的な音源ばかり置いてる超良いレコード屋さんをやられていて。
昔、毛利さんとイベントで共演した時に衝撃的だったのがレコードバックからレコードじゃなくてシンバルを選んで掛けてて(笑)。レコードバック一杯にシンバル詰めててなんじゃそりゃー!って(笑)。BusRatchの泥棒日記っていうアナログの片面も全面エンドレスループになっててライブで頻繁に使かわせてもらってた。



U. KEN-ONEさんは最近ポータブル・ターンテーブルを使われていますよね。どういったキッカケで使い始めたんですか?

K. 去年の5月から触り始めたのでまだ一年立ってないんですよ。実は、それまでスクラッチ熱が冷めてしまっていて一年位スクラッチをやっていなくて。そんな時に友達がポータブルを持って遊びに来たんです。ポータブルが流行ってきているのは何となく知っていたんですけど実際に触ってみたら面白くて。まず、持ち運びが出来るから外でスクラッチが出来るのが大きかった。今まではスクラッチの練習って家で壁に向かって黙々とやるイメージだったのがガラって変わって。家の中じゃなくて外に出て公園とかで健康的にスクラッチの練習が出来るっていう。だから結構ポータブルを持って青空の下でスクラッチしていますよ(笑)。代々木公園でやっていたらタイコの人が来てセッションしたりとか。


L. 俺もKEN-ONE君の動画見ててポータブル気になってた。スケーターと同じ感覚だよね。公園でいつでもスクラッチが出来るっていう。

U. 持ち運び出来るという点ではQFOも近いですよね?L?K?Oさんはライブでも使ってましたけどQFOの利点って何でしたか?

L. あんなデカイの公園とか外に持って行けないけどね(笑)。
利点はウルトラピッチでプラマイ60いけるから音階がすごい。あとフェーダーも内蔵されてるからQFO単体でスクラッチプレイが完結するっていうのが一番の特徴。演奏に特化した変態ターンテーブルだね。今ヤフオクで高くて伝説の名機みたいになっているけど。



K. 確かにQFOの小さい版という感じはしますけどQFOは電池を使えないですからね。ポータブルは電池でも動くんですが単一が六本必要で。でも、モバイルバッテリーが使えるのでケーブルを一本買えば大丈夫。あと、フェーダーが取り外し出来るので付けたせます。最初はスイッチ系のクロスフェーダーが付いているんです。ON/OFFの。それでもスクラッチは出来ますが本格的にやるには少し難しくて。今まで自分が培って来たスキルを反映させるにはフェーダーを変えるしかないってなって。

U. かなり改造されているんですよね?

K. これはinnoFaderといって普通のDJミキサーにも応用出来る物です。長さも普通のフェーダーと同じで。
僕が改造した部分としてはフェーダーとレコード針を取り付けられるように変えました。最初は簡易的な針が付いているんですが若干飛ぶんですよね。なので飛びにくい針を付けられるように改造して。あとはスタートとストップも。デフォルトだとアームを上げて回転するんですが、それだと皆でセッションする時にいちいち戻るのが面倒だったので。
こちらでスタートストップスイッチを付けてもらいました→https://www.skratch-lab.com/



今ってセラートとかトラクターとかのデジタルDJが多いじゃないですか。僕もトラクターを使ってたので、デジタル用のバイナルコントロールを7インチ・サイズにカットして。今は携帯でDJ用のアプリがあるのでポータブルで使えるようにしました。勿論、アナログでも擦りますけどね。携帯だとポケットに入れて置けばすぐに出来ますから。
innoFaderの値段自体は12000円、innoFader専用フェーダー固定ボックスが4000円くらい、ポータブル本体は15000円くらいですね、それで本格的にスクラッチ出来ちゃいます。


L. ポータブルが盛り上がって7インチのバトブレがまたどんどん出てきたら面白いね。

K. Stokyoでは7インチのスクラッチレコードや12inchのスクラッチレコード専門に扱っていて、ポータブルの改造パーツ、Fader、トーンアームも扱ってます からね。
STOKYO ONLINE STORE
http://www.stokyo.jp/

U. KEN-ONEさんはポータブルもそうですが昔から1ターンテーブルをメインにされているじゃないですか?何か拘りがあるんですか?

K. チームバトルもそうですけどスクラッチで曲を作るというのが面白くて。ループさせられれば一人で出来てしまうし。一般的にはDJ=曲を流す人ってイメージですけど、スクラッチでリアルタイムに曲を作るっていうのが自分的に新鮮なんです。

L. Q-BERTもそうだけど一台のタンテを極めていく人ってギタリストと同じように演奏者で、スクラッチでどれだけ面白いことが出来るか続けていく求道者だよね。おれも久しぶりに練習したくなったし。これを機にみんなでポータブルTT買って暖かくなったら公園で遊びたいね!家にばっか居ないで(笑)。